社員を『介護難民』にさせてはいけない!

「介護難民」という言葉が最近は良く聞かれます。日本はこれからますます高齢化が進み、介護については早急の対応が必要になるでしょう。「待機児童」と比べると年齢的には真逆ですが、行政に求めるものは一緒です。介護も保育もその家庭だけでは賄いきれません。行政の助け、企業の助けが必要なのです。
ところであなたの企業は、社員の介護環境についてどのくらい把握しているでしょうか?

「介護」は突然やってくる

実はこれを書いている私は、父親の介護をしています。しっかり者で、今でいうDIYが得意な父は、家の事は何でも修理していました。それが今では、一人で服も着れません。父の場合は徐々にそういう風になって行きましたが、周りの介護をしている人に聞くと、「転倒が原因で…」「病気で入院してから…」など、突然にやってきた人もいました。

その人たち中には、「介護」について何の下調べも出来ていなかった人もおり、地域の介護サービスの事も詳しくは知らず(あることは知っていた)、介護認定の事も知らず、役所に言ったりネットで調べたりとアタフタしたようです。ましてや会社務めの人は、預けるところが直ぐには見つからず会社を休まなければならなかったり、ケアマネージャーや役所との面談などにも時間を取られます。

慌てない為にも、離れて暮らしている人なら、引き取る引き取らない、兄弟姉妹がいる人は誰が全般の面倒を見るのかを、元気なうちにある程度は決めておくべきではないでしょうか。

企業が社員の介護ニーズを把握していないのは46.4%

これは、平成24年度厚生労働省委託調査で「仕事と介護の両立に関する企業アンケート調査」の数値ですが、過去3年間に介護問題に直面している社員がいるのか、またどのような支援を求めているのか等のニーズ把握は、「特に把握していない」が46.4%でした。また、把握できた人の中で、32.2%が上司の面談等で把握できたようです。それも自ら介護について相談をし、それによって企業側も知るパターンが多いようで、積極的にかかわっているのかと言えば決してそうではないようです。

では、介護休業制度を利用した数値を見ると、H23/4/1~H24/3/1で約60%が利用していません。また、1000人以上の大企業は約62%の人が利用していないと答えましたが、300人以下の中小企業では、約90%の人が利用していないと答えています。この格差は、「育休」とも同じで、中小企業での介護休業制度の取得は難しいようです。

そもそも介護休業制度がない中小企業もあります。この現状では、これからますます広がる介護社会に対応することは無理でしょう。自社の社員が「介護難民」にならないように、早急な改革が必要になってきます。

企業は介護と仕事の両立を図る努力を

総務省の就業構造基本調査によると、介護が理由で会社を辞めるたり転職する人は年間10万人います。当然お給料は辞める以前よりは少なくなり、安定的な収入ではないようで、金銭的な負担が介護者に重くのしかかる現状があります。仕事と介護が両立できるのが理想ですが、正社員男性の3人に1人、女性は5人に1人が「両立は困難」だと答えています。

企業はこうした不安を払拭できるような努力をし、自社の介護ニーズの環境作りに努めなければなりません。
例えば、両立支援によく導入されているのが「時短」です。一日の労働時間を短縮したり、または、半日・時間単位の労働などで介護との両立を支援できます。「フレックスタイム制度」の導入も有効な支援で、検討する価値はあると思います。

しかし、「介護難民」は決して企業だけの責任ではありません。行政の問題でもあり、個人の問題でもあります。親の介護は必ず来るものです。ちゃんと介護の事を理解し、現在どのようなサービスが受けられるのか、将来介護認定が上がった場合どうしたら良いのか、近くの施設がどのようなものなのか等、個人が時間をかけてやることも沢山あります。決して、行政や企業任せにならないことが重要ではないでしょうか。

まとめ

日本は高齢化社会に突き進んでいます。そんな中で「介護問題」は社会全体の喫緊の問題です。「待機児童問題」は関係ない人もいるかもしれませんが、「介護問題」は全員にやってくるのですから、「介護難民」にならない為に「介護難民」にさせない為に、今から取り組むべきではないでしょうか。


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