人事評価制度の必要性
企業がある程度成長すると、社員を評価するために人事評価制度が不可欠になってきます。人が人を評価するのですから、全ての人が納得する制度を作ることは難しく、運用の仕方次第では不満の温床にもなります。しかし、人事評価制度には重要な役割があるのです。
適正な人事評価制度は大きな利点がある
人事評価制度には昇給や昇進を決めるといった目的があります。ですが、それだけではありません。企業が成長していくかどうかはそこで働く社員次第です。業績の低い企業は社員の意欲も低下しがちですし、反対に業績が良い企業は働く人の意欲が高い傾向にあります。そうさせるための仕組みが人事評価制度です。
人事評価制度は社員の意欲を喚起し、成長してもらうためにも必要です。どのような行動が評価に値するのか明らかにすることでその行動を通して社員の成長を促すことができるのです。
多くの企業ではリーダーシップを取れる人材が不足しています。このような人材を育成するにはお金も労力もかかります。そこで人事評価にリーダーシップに関する項目を導入します。これは社員にどのような人物を求めているか明らかにできるという効果もあるのです。
これは新しい社員を採用する際にも活用できます。採用においても自社の企業理念や方針に沿った人物を採用することが可能になります。採用される側も基準が明確であるためそれにそぐわないと分かれば自然と離れるでしょう。結果的に質の高い採用が可能になります。
他にもメリットがあります。どうすれば評価されるのか分かれば、「頑張ろう」という気持ちが出てくるはずです。社員にとっては努力の方向性を間違えて報われないといったリスクを避けることができます。現在は余裕のない企業も少なくない現状を考えれば多くの社員の意欲を引き出すことができることはその企業の強みと言えます。
また、就労意欲の高い人材が増えることは離職率を下げることにもつながります。継続的に教育できることで知識や技術が蓄積され、人材育成にも非常に効果的です。人事評価制度次第でそれが可能なのです。
人事評価制度の落とし穴
人事評価制度を作るときには押さえておくべきポイントがあります。それは自社の経営理念や企業方針にあったものでなければうまく機能しないことです。
一例を挙げてみます。かつて日本では年功序列により、勤続年数や年齢に応じて賃金や役職が上がっていく制度を多くの企業が取り入れていました。しかし1990年代前半のバブル崩壊により、年功序列を維持できなくなりました。そこで仕事の成果に応じて昇給・昇進するよう成果主義が導入されます。
ところが多くの問題点を指摘されるようになり、運用の失敗も目立つようになってきました。まず、何をもって成果とするのかが難しいのです。目に見えて成果を上げることができる業務もあれば、そうではない業務もあります。試行錯誤が求められてすぐに結果の出ない分野は敬遠され、容易に結果の出る無難な分野が優先されるようになりました。これでは時間をかけて困難なことを達成しようとする人はいなくなってしまいます。
また他の社員に教えたり、部下の育成をすることはライバルを増やすだけで損をします。「努力し成果を出した社員が報われる」という当初のもくろみとは違い、個人主義が蔓延し職場がギスギスするようになりました。
日本企業の強みはもともと職場でのチームワークにあったのです。ところが多くの企業に導入された成果主義は多数の日本企業の経営理念や方針に沿ったものではありませんでした。
導入当初は歓迎され優れていると思われた成果主義による評価はうまくいかないケースが多く見受けられたのです。このように良いと思われた人事評価制度であっても当初の意図とは違う思いもよらない落とし穴にはまってしまうこともあります。
低い評価を受けた社員であっても能力や意欲を引き出すことができる
自分がどう評価されるかは働く人にとっての大きな関心事の一つでしょう。予想外の高評価であればうれしいものです。逆に低ければ不満に思うことも出てくるでしょう。普段の仕事をろくに見ていない上司、能力が低いと思われる上司から評価されても不服に感じる人も多いのではないでしょうか。そうであれば働きに応じた公平な評価を要求したくなるのが自然です。
しかし、残念ながら誰もが納得する公平な制度を作ることはできません。これは何が公平なのかが人によって異なってくるからです。分かりやすく数字をあげることが良いと思う人もいるし、そうではなく雰囲気を重視し人とのやりとりをうまくこなすことを高評価にするかもしれません。もしくは部下の育成が大事だと思う人もいるでしょう。
このように人によって捉え方が違う公平という、あいまいな基準を用いることには無理があると言えます。
公平に評価するということが難しくても納得してもらうことは必要です。評価が低いためにそのまま意欲を失ってしまっては元も子もありません。
そのためには評価基準が明確であることが求められます。好き嫌いや評価する人によって成績に差が生じてはいけないのです。そこでどのような行動を取れば良いのか、その行動がどのようなレベルに達していればどういった成績になるのかを前もって決めておかなければいけません。
それでも評価が低ければがっかりしてしまう人が出てくることは避けられません。中には人格まで否定されたと思う人だっているでしょう。そうではなく仕事が想定していた基準に達していないだけなのです。
そこでどうすれば高い評価を得ることができるのか具体的に伝えます。基準さえ満たせば高評価を得ることができることを理解してもらうのです。低評価の社員がそれに負けずに奮起してもらうための制度として人事評価が必要なのです。
まとめ
多くの企業は人材育成に頭を悩ませています。やり方次第でその企業にあった社員に育てていくことは可能なのです。そのために決しておろそかにできない制度です。また人手不足から余裕のない企業も少なくありません。低評価の社員に奮起してもらうためにも適切な人事評価制度が必要です。
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