『コンピテンシー評価』が企業の業績を上げる

コンピテンシー評価が日本に入ってきたのは、1990年代の後半です。これまで日本の人事評価で主に用いられてきた「能力評価」に変わるもので、多くの企業または自治体で採用されています。一度はブーム的なもので終わりかけたかのように思えましたが、ここにきて再評価を受けています。そもそもコンピテンシー評価とはなんでしょうか。どんな効果が期待できるのでしょうか。

「コンピテンシー」とはどんなもの?

コンピテンシーとは「業績を残せる人達に見られる行動特性」の事を言います。分りやすく言えば『デキル社員の行動ノウハウ』でしょうか。例えば、「常に成績優秀な販売員は、お客様の雰囲気に合った対応が出来る」とした場合、この“お客様に合わせた対応を出来る行動”が『コンピテンシー』なのです。

そして、その行動を評価することを『コンピテンシー評価(行動評価)』と言います。この行動評価によって、デキル社員がどんな行動をしているのか把握し、企業全体でコンピテンシー能力を高めていこうとするものです。

もともとは、アメリカ国務省が有能な外交官採用の為に採用した評価制度で、1970年前半にハーバード大学の行動心理学者マクレランドが提唱しました。相手に対する尊厳、人脈構築能力、異文化への対応能力等が主な行動特性として見られたようです。

日本では若干日本流にアレンジされたものもあり、「アメリカの物とは違う」と言うコンサルタントもいるようですが、企業ごとに行動パターンも違うでしょうから多少のアレンジは許容範囲ではないでしょうか。

「コンピテンシー評価」と「能力評価」の違いはどこ?

能力評価は「職務遂行能力」とも言われ、業務をこなすうえで必要な能力のことを指します。分りやすく言えば「○○できる」と表現し、できる“能力”を評価しますが、それに対してコンピテンシーは、「○○している、○○した」と表現され、成果に直結する“行動”を評価します。つまり、能力評価は成果を上げなくても能力が有る事自体を評価され、コンピテンシー評価は、成果を上げるための行動を評価するものです。

ここまで読むと、「なんだコンピテンシー評価とは成果主義の事か」と思われる人もいると思いますが、成果主義とは“似て非なる”ものです。では、どんな違いがあるのでしょうか。

成果主義とは、結果事態に重きを置きますが、コンピテンシー評価は、成果を上げるための行動を評価するため、たとえ成果を出す前の道半ば状態であっても、行動を起こしている事が評価されます。

例えば、その行動を飛ばして、たまたま成果を上げたとしても、評価としては低くなります。成果主義とはそこが根本的に違うのです。

企業としても、成果ばかりを求める人事制度ではいずれ歪みも生じ、人材育成の面でも優秀な人材が育ちにくい環境になります。しかし、コンピテンシー評価であれば、『行動目標』としても活用できるので、人材育成に適した評価制度ではないでしょうか。

コンピテンシー評価を能力向上へつなげる

コンピテンシー評価のメリットは、成果に直結する行動を評価することで、更なる業績向上を目指しやすくなる点にあります。自分の行った行動をどのように改善すれば業績が上がるのかがハッキリとしているので、能力開発にも繋げられます。しかし、「評価を能力開発へつなげるように」と本人任せにしては、個人ごとの差も生じ、上手く能力開発までにはいきません。更なる能力開発には、組織全体で取り組む必要があります。

そのためには必要となるのが「行動目標管理」です。行動目標管理は業績目標管理と同じ要領で行うもので、まず評価期間を決める必要があります。期間が決まれば、向上させたい・改善したいコンピテンシーを決め、具体的な行動の設定をします。これは個人に任せるのではなく、上司と一緒に詰めていくのが能力開発の近道です。

途中、中間報告や面談、現状の整理や課題をやりながら進め、最終的な評価の後は次期課題の検討に入ります。その際、上司は部下とのコミュニケーションを取りながら進捗状況を確認することを忘れてはいけません。

まとめ

コンピテンシー評価とは成果に直結する行動を評価するもので、能力評価に変わる評価制度とも言われています。高い業績を上げる人の行動(コンピテンシー)を、社員全員が行えるようになれば、企業の業績も上がり、個人の能力向上にもつながります。

成果主義とも違うこのコンピテンシー評価を採用することで、企業の体質も変わるのかもしれません。

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