限られた費用で新人教育を良いものにする

寒い日が続きますが、あと1ヶ月で新年度を迎えます。「ピカピカの1年生」が数多く入社してきますが、新入社員への教育が思うように出来ていないという企業が多いのではないでしょうか。「アベノミクス」によって、大企業は利益率が上がったので教育に費用をかけられますが、中小企業はあまり恩恵を被っていないためにわずかな費用しかかけられません。

また、中小企業では教育のノウハウがあまりない傾向にあるので十分な教育が出来ないか、逆に無駄が発生することも考えられます。

そこで費用を抑えつつも内容の濃い新人研修をする方法を考えてみます。

外部に委託するのもアリ

そもそも、1人の従業員にどれくらいの教育費用をかけているのでしょうか。2015年度の実績では約3万5000円となっており、1000人以上規模の企業では4万円ほど、300人未満の小さい企業では2万5000円しかかけられていません。また、製造業においては全体で2万8500円と気がかりな数字です。

それでも教育に対する意識は高まっており、予算を増やしたという企業は半分近くにも上ります。なかでも新人教育は実施率が最も高く、90%を超えています(2016年)。

これ自体は大変良いことなのですが、問題は「教育の質が高いか?」ということです。例えお金をかけても、講師がしっかりしていなければ従業員は成長できません。中小企業は外部機関に委託する余裕がないと言われますが、ここで大切なのは「1円当たりの、従業員の成長率」なのではないでしょうか。具体的にこの数値は測れませんが、社内講師に期待できないのなら思いきって外部機関に頼むのはどうでしょうか。

「そんなことをしたら費用が掛かるではないか」と言われそうですが、内部講師を外部講師に切り替えるのですから、当然内部講師の費用は減るわけです。それに商工会議所が行っている講義は比較的安いです。ですから、トータルで見るとそれほどの増加にはなりません。それよりも専門知識が豊富な講師の方が、従業員を大きく成長させることができます。

いかにして従業員を成長させるか。これが一番大事なのです。

研修内容をしっかりとしたものにする

教育するのが自社であっても外部であっても、その内容は自社で決めるべきです。特に大事な新人教育を外部に丸投げではいけません。内容も充実したものにする必要があります。

まずは何と言っても「ビジネスマナー」でしょう。近年の「グローバル化」により、国際競争が激しくなって企業の商品は「選ばれる側」の立場になっています。そんな厳しい環境を乗り切るには新人の段階から‘しつけ’をしっかりとする必要があります。

名刺交換や電話対応、メールを送る際の注意点など‘社会人の常識’はすぐに身に付けさせねばなりません。最近は「ゆとり教育」の弊害もあって親や学校の先生のしつけが十分に出来ていません。中には敬語の使い方を知らずに学校を卒業してしまった人もいるでしょう。

そういう人たちを教育するのは楽ではありませんが、常識を身に付けないまま中堅社員になってしまう方がよほど問題です。「この会社の教育はどうなっているのだ?」となり、信用問題にもかかわります。ゆとり教育を恨みつつ(笑)、根気よく指導していきましょう。

また、最近の若者は会社への「帰属意識」が薄いように思われます。自分の会社のウリは何なのか、どういうサービスを提供しているのかをあまり理解していない人が増えています。これで営業に出ても相手のハートは掴めず、成績は伸びません。むしろ落ちていくでしょう。

なにも「社蓄」を育てろと言っているのではありません。別の社宅に住む必要もないです。しかし、今の若い人たちにはもう少し「会社の一員である」と言う意識を持ってもらいたいですね。その方がパフォーマンスの向上につながるのは間違いないことですから。

ケチってはならない

「限られた費用で」と言っておきながら「ケチるな」というのも矛盾しているかも知れません。ですが、これまでの内容を見ると「十分な教育をすると優秀な社員が育ち、企業にとってプラスになる」ということが分かって頂けると思います。優秀な社員が増えると生産性が上がり、売り上げも増加します。ですから、無理をして費用を削減しなくても後で回収できるのです。

例えば新人の教育を1人につき1万円で実施したとしましょう。これで社員は成長するでしょうか?因みに小規模な企業は入社前の教育に重点を置く傾向があり、1人当たり5万円をかけている所も見られます。変にケチっては、得られるものも得られなくなります。

また、従業員の教育「費用」という一面だけで語るのもどうでしょうか。確かに費用ですが、その一方で「未来への‘投資’」とも言えます。特に新人を教育すれば何年後かに費用は回収され、上手くいけばそれを上回るくらいのものを生み出せるかもしれません。その‘プラスの部分’を見込んで予算を決めることが大切なのではないでしょうか。

まとめ

日本が「失われた20年」から脱出できていない今、一部を除いて企業の財政は潤っていません。新入社員をはじめとする教育にお金をかけるのも一苦労でしょう。それでも会社の未来・社員の未来のために少しでも研修内容に工夫を凝らす必要があります。また、費用を切り詰めすぎるのではなく、「教育は未来への投資だ」と言う意識も大切です。優秀な社員を育てて企業を活性化させ、次こそ「いろんなものを得た10年」にしたいですね。

 

 

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