今までのOJTを改善して、高いレベルの人材を育成しよう
OJTとは、「仕事は経験から学ぶ」という事から由来しています。よく行われる社員育成の手法として、現場の仕事を通して人材を育成します。
しかし、人材育成の為のOJTであるはずが、現実には先輩や上司の指導方法・方針・実務経験にムラがあるため育成が期待通りに行いかないことがよくあります。これは経営者の視点から考えても避けたいものです。
このような事態を解決するために、組織行動学者が提唱した経験学習プログラムがあります。このシステムを使って従来のOJTの弊害から抜け出し、質を高めましょう。
OJTから進歩して経験学習プログラムに
OJTは、職場で実務をさせる社員職業教育のことです。企業における新入社員教育では、一定期間の集合研修を経てOJTを導入する形式が多いです。専門的な職務能力を要する職種の場合、一人の新入社員に一人の指導者が割り当てられて実務を進めながら仕事を教えます。
指導者の特定には、指導力を考察して指名するようにします。ただし、指導者となった人に指導力が伴わない場合、新入社員の能力向上どころかその可能性をも摘み取ってしまうかもしれません。会社内での問題になる事もあります。これが社員の離職に繋がる可能性も考えられます。
この弊害を除去する方法として、経験学習プログラムという社員教育方法が提唱されました。これから、経験学習プログラムと実行する時の注意点を紹介します。
経験学習プログラム
最初は具体的な職務経験から始まります。社員は仕事を通して様々な経験をしています。そのため、経験学習プログラムにおいては普通のありきたりな職務ではなく,現在のスキルを少し超える、チャレンジ精神を発揮できるような経験が成長に適していると考えます。
経験学習プログラムは、最初の経験が全てです。製造業に例えれば、原材料に当たります。その原材料が不良品だと完成品も不良品になってしまいます。指導する社員には、適切な職務経験を与えましょう。
そして次は「内省的観察」です。自らの経験や出来事の意味を、一旦職務とは離れた場から振り返ります。成功・失敗の元となる原因を多くの視点から客観的に観察するのです。この時大事なのは、指導者が社員に対して一対で適切なアドバイスをする事です。
そのときに指導者の私情を入れてはいけません。そしてアドバイスが終わったら、抽象的概念化という経験学習プログラムの重要な部分に入ります。
具体的職務経験は、この内省的観察を経て、本格的な学習になります。具体的職務経験と内省的観察によって得られたものから本格的な要素を導いて、今後も活用出来るようにするための理論構築を行います。
成功例はそのまま持論となり、失敗例は改善するという目的も生まれ、どちらにせよ活用できるものとなります。そして、この段階で得られた学びは、社員個人の持論・哲学になります。構築された持論は、自分自身の業務にとって十分に役に立つはずです。
最後は、試行です。構築された持論を、再度経験学習プログラムに活用させるための出発地点です。そうして、経験学習プログラムを活用していけば社員は成長し、それに伴い会社も伸びていくでしょう。
経験学習プログラムの注意点
経験学習プログラムを活用する際には、注意点が3つあります。まず1つめは、社員育成目標を明瞭・確実に定めることです。計画を設定する時に目的や目標をはっきりしないようでは、プログラムを実行する意味がありません。会社の未来像と社員の未来像が合致しないようでは、予算と時間の無駄遣いです。このような事を避けるためにも、目標を定めることです。
その時には指導する担当者が集まり、会社の未来像と社員の未来像を一致させることがが必要不可欠です。ある人事コンサルタントは、依頼された会社の研修で会社の未来像に鑑みて、指導担当者の経験から育成目標設定を導き出すということを行っています。
2つめは、指導者と指導されている社員と、お互いにコミュニケーションを取りながらプログラムを進めることです。内省的観察で自分を客観的に観察することは、なかなか難しい事です。それを補うのが指導担当者です。特に職務経験を振り返るときは、人は誰でも自分の失敗を聞きたくないものですが、それをするのが指導担当者なのです。
3つめは、経験学習プログラムではお互いの会話を強化する事です。振り返る事や社員の持論構築には、会話を強化することが成否に影響をもたらします。持論を持たせるためには、社員自身から導き出すようにコーチングをするのです。それには会話が必要です。場合によっては、言いたくないことも言わねばならないこともあるでしょう。しかしそれを言わねば持論が中途半端な持論になってしまいます。また、会話をすることでお互いの距離も接近するでしょう。
まとめ
昔からほとんどの会社の社員教育はOJTです。しかし、問題点もあることは認めざるを得ません。指導する側のスキル・能力にバラツキがあると、指導される側のスキル・能力にもバラツキが出てしまいます。
それを補正する目的で、経験学習システムが誕生したのです。職務経験から、それを振り返り・自分自身の内省的観察そして自分の持論を構築するのです。その経過を経て社員は立派になっていくでしょう。
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