OJTとOFF-JTを組み合わせて人材を育成しよう

人材育成は、企業にとっては経営に重要な要素です。当たり前の事ですが、人材を育てるためには社員教育が欠かせず、それには2種類あります。それがOJTとOFF-JTです。

しかしこれらの方法には一長一短があり、どちらも完璧な教育方法ではありません。そのため、短所が表面化して予算と時間をかけたのに育成が思うように進まず企業が伸びるどころか停滞した例もあります。

ではこの短所をどうすればいいのか。それは、両者の長所と短所を組み合わせて実行するのです。

OJT(社内教育)の成果と課題

厚生労働省の調査によると、企業の5割強がOJTを実施しています。特に新入社員教育では一定期間の集合研修を行い、それからOJTを行います。社員の教育担当者として、上司・先輩が主に割り当てられます。

まず、「現場で上司や先輩がやってみせる、そして、説明する、次に、社員本人にやらせてみる、まずいところがあれば追加で指導する」というのが一般的な流れです。この方法だと、「業務に即した内容の指導ができる」「教育の時間を捻出する必要がない」「その場に対応した指導ができる」「一対一で丁寧・細部にわたって指導ができる」「現場で指導するために予算が大してかからない」「上司や先輩、部下との相互理解や信頼関係が築かれる」「個人のレベルに合わせた目標が設定できる」という長所があります。

しかし、この方法にも短所はあります。「教育担当者も業務を行っているので担当者勤務時間・指導責任の負担が大きい」「担当者の知識・スキル・指導力によって教育効果は大きく左右される」「担当者が部下育成のための指導方法を学習しなければならない」「業務の基礎的・特に体系的な理解を指導するには難しい」「会社が経験のない業務をすることになった場合、対応できない」などです。

一番重要な短所は、指導者の指導力によっては効果にばらつきがあるという点です。これでは、教育効果の低い社員を指導した人にも責任がかかってきてしまい、企業は社員育成に期待できません。そのため、次に、OFF-JTの成果と課題を挙げます。

OFF-JT(社外教育)の成果と課題

OFF-JTとは職場を離れて研修を受ける事で、「職場にいる時とは異なった思考や視点から見る事ができて、新たな気づきを得る可能性が生まれる」「業務の基礎的・体系的な理解を得ることができる」「研修生同士のコミュニケーションも広がり団結力を生み出す」という事が期待できます。

短所は、基礎的・体系的な研修内容がすぐに現場で役に立つとは限らない、そして時間と予算がかかるという点です。一番注意しなければならないのは、前者の「すぐには役に立たないという事もある」という点です。なぜなら、研修に費やした時間と予算の無駄遣いと考えられるからです。

ここで社外教育の極端な例を紹介します。ある中小商社が、社員教育会社にセールスコースでのOFF-JTを委託しました。セールスコースは、販売の専門家を養成するためのコースです。その研修結果は抜群で、売上高は大幅に伸び大商社に成長しました。

しばらくして、顧客から自殺者が出て、会社が詐欺をしていると、大騒ぎになりました。司法関係機関が動き、社員から逮捕者まで出るとマスコミからバッシングを受けました。そして、会社は、倒産・解散となってしまいました。

その結果、世間の人達からのやり場のない怒りは、社員教育会社に向けられ轟々なる批判を受けることになってしまいました。新聞紙の求人欄に「セールスマン募集!ただし、某社員教育会社の出身者はお断り!」との社員教育会社を非難するような求人が出るほどでした。

このような社会批判を受けて一部の経営学者や教育学者からOFF-JT不要論が出たこともありましたが、社員教育会社は依頼会社の教育方針に従い教育を行ったのです。

これは社外研修が大問題になった例ですが、社外教育を否定する訳にはいきません。自社で経験したことのない事柄を素早く習得するには外部機関に委託するしか方法がありません。またOJTでは指導力にムラが大きいため、OFF-JTで指導力のある人が教育対象者を集合させて研修するという方法は効果的です。

費用対効果を考慮して使いこなそう

OJTにもOFF-JTにも長所・短所があります。OJTが社員教育の主流になっているのは、予算と時間の関係でしょう。社内で社員教育をすれば、確かに予算の節約になりますし、時間もかかりません。

それでも問題が出てきた時は、やはり社外教育機関に委託するしかないでしょう。それには、時間と予算を注ぎ込むのですから、教育機関の設定には注意を払うべきです。

その他に中小企業診断士の国家資格を習得する方法もあります。これも簡単に取れる資格ではありませんので、業務に影を落とします。また、経営学修士(MBA)の学歴資格を習得させる方法もあります。

これには、国内大学での場合、2年ぐらいの時間がかかり、その間業務も手抜きになりがちです。そして外国に留学するのだとそれ以上の時間と費用がかかります。資格習得してからの身の振り方も難しい面があります。これでは全くの時間と予算の無駄遣いです。このような事例に鑑み、費用対効果を考慮したうえで、OJTとOFF-JTで人材育成に取り組みましょう。

 

まとめ

OJTの短所であるのは、未経験業務をすることになった場合に指導者がいないことと指導者の指導にムラがあるという事です。そこで職場を離れて環境を変えるOFF-JTで自分自身を違った視点で見る事により育成の効果が上がります。OJTとOFF-JTをうまく活用すれば会社が望むような人材を育成することができるでしょう。


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