建設業従事者に若手を呼び込むには?

私たちの国日本では、古くから林業が盛んで主な産業の一つでした。はるか昔から木材を多用した、神社・仏閣・お城が名工によって創られて現在に至り、私たち日本人だけでなく世界の人々に愛されています。しかし、最近では木材そのものの需要が減り、建設業にも影響を与えています。特に家を建てる大工さんに至っては、後継者不足が深刻な問題となっています。今回は建設業の悪いイメージを払拭し、不透明な雇用形態にならないよう雇用契約の改善や福利厚生の充実を計り、雇用の増進に結び付け、後継者を育成している建設業者をご紹介します。

建設業に携わる人がなぜ減少していったのか

建設業就業者人口は1989年で587万人、1990年には588万人と緩やかに増加し、1991年には 600 万人を突破しました。そしてピークは 1997 年(約685万人)となり、翌年以降は減少の一途を辿って2014年には505万人と17年間で80万人減少し、現在に至っています。
建設業従業者のなかでも「技能技術者」の減少がとりわけ多く、背景には2008年のリーマンショック時に数字の落ち込みがあります。原因として銀行の貸し渋りにより、ゼネコンの事業計画の見直しという問題が発生したため、業界全体に仕事の受注が減り離職を余儀なくされたためです。また、逆に2011年の東日本大震災時には、前年比で約5万人増加しましたが一時的な回復にとどまりました。

就業者人口減少の理由としては、時代背景も勿論あるのですが、高学歴志向の若者が増え、若年層の就業者が減ったことがあげられます。実際に建設現場に行って見るとよく分かるのですが、年齢層の高い人が多いのに驚きますし、職種によっては若年層の人は見掛けることはなく、改めて後継者不足を認識させられます。

なぜ若年層の人が少ないのか。考えられるのは、建設業に対し悪いイメージを持っているということです。一昔前から現在に至るまで、3K『きつい・汚い・危険』のイメージが強いうえ、最近では給料が安いと思われていることも原因の一つです。それ以外にも福利厚生や雇用契約の不透明さであることもあげられますし、一人前の技能や知識を取得するのに時間を要することや職場での上下関係の厳しさなども挙げられます。
また、給料の支払い形態にも問題があるようです。多いのが日給計算、もしくは日払いによる支払方法です。このような場合、病気などで休んだ際の補償がなく、生活に支障をきたす恐れがあるからです。

建設業就業者の増加を目的にイメージアップを計る

建設業の良さを若年層の方に理解してもらい、雇用に繋げるには様々な取り組みが必要です。ある建設会社では、建築に興味のある高校生を対象に建設現場での仕事を体験できるイベントを実施しており、将来の人材確保に取り組んでいます。この目的は、実際の仕事を体験することで一つ一つの作業の持つ意味を理解し、納得できることです。
次に挙げたいのが、解りやすく仕事を教えることです。一昔前は当たり前のように行われた指導である『一方的な仕事の指示』や『理由なき叱責』では、今の若い人に受け入れられません。つまり、私たちが指導を受けた時代とは違うことを認識することです。勿論、甘い指導ばかりでは人間は成長しませんし、時には厳しさも必要でしょう。

就業時間を明確にすることも重要です。例えば、朝8時~夕方5時と時間を区切ることで作業終了後のプライベートな予定も入れやすいですし、前向な姿勢で仕事に取り組めるのではないでしょうか。一昔前のように終業時間に制限がないようでは、仕事へのモチベーションの低下にも繋がります。要は、メリハリをつけて定められた時間の中で仕事への集中力を、身につけることが重要です。

建設業界においては、福利厚生が充実している会社は多くはありません。なかでも大工さんに至っては通称、一人親方(個人事業主)とよばれる方が多いですし、労災保険や雇用保険への未加入者がまだまだ多いです。その結果、労働災害発生時において休業補償や治療費などの問題が発生し、敬遠されるのではないのでしょうか。今後は若年層の離職離れを防ぎ、繋ぎとめるために安心して就業できる風土づくりが必要でしょう。

資格の取得やコミュニケーションの形成を大事にする

仕事をするうえで、全ての業種おいて資格・免許といった言葉をよく耳にすると思います。もちろん資格・免許を持っていなくても職種によっては支障はないのですが、無資格の状態だと様々な場面において影響を及ぼします。企業側は業務を行う上で必要な資格・免許取得に関したスキルなどを支援することで、企業への定着率も上がり離職離れを防ぐことになるのです。
また、仕事への指導法としては仕事の趣旨・目的を明確にし、進めて行くことが重要です。なぜなら、これから行う作業の流れや目的が理解できていないと満足のいく良いものはできないからです。

もう一つは職場における人間関係の重要性です。仕事は一人で行うものではなく、一人ひとりの協力があって初めて完成するものです。そのためには普段からコミュニケーションを積極的に行うことです。具体的には毎日の挨拶は勿論、休憩時間の過ごし方などコミュニケーションの場はいくらでもあります。ここで一つ気を付けたいのが、政治・宗教や個人の趣味に纏わる話題は、避けたほうがいいということです。特に大勢の人がいる場合、気まずい雰囲気になる恐れもあるからです。

コミュニケーションの取り方としては、職場主催のBBQパーティなどのイベントも効果的です。ふだん無口な人でも、適度なアルコールが入ることでいい意味での「違う一面」が見られ、より親睦が深まることでしょうし、今後一緒に仕事をするうえで有効です。その他にも、ソフトボール大会やボウリング大会など、盛り沢山のイベントを実施するのもいいでしょう。仕事の厳しさの中にも、仕事への充実感が得られるということです。

まとめ

人口の減少と共に、職種によっては影響が出ています。特に建設業界においては技術、技能の継承者が慢性的に不足しています。企業としては、福利厚生をはじめ早急に改善を行い、日本の持つ優れた技能や知識を後世に伝えることを第一に考えなければいけません。そのためには、個々の努力は勿論、行政、企業の支援が必要でしょう。

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