少子高齢化のこの時代、大学経営をどうするべきか

今、大学は経営改革の時期にきている。ある大学の取り組みとは

現代、わが国では少子高齢化が進み、人口の減少に歯止めが掛からない状況となっています。そして慢性的な人手不足という状態が続いています。このような状況は企業だけでなく、大学経営に影響を与えています。特に私立大学は学生の確保が課題となり、年々深刻さを増しています。知名度の高い国立大学であればともかく、知名度が高くない大学となると定員の確保自体が難しく、学部の廃止や規模の縮小を余儀なくされたり、中には学生の募集を取りやめて廃業するケースも出ています。もちろん大学側も色々と手を打っています。一部の私立大学では付属幼稚園を新たに創り、エスカレーター方式を採用して将来の学生確保に取り組んでいます。また、大学講師に社会的に知名度の高い人物を採用して学生の関心を引くことで定員の確保を狙う所もあります。いずれも「資金力」という問題が出てきますから、実行するのは難しいでしょう。

♦ここでポイントなるのが、年代別にみる人口の減少と大学入学者の就学率です。先日、今年の成人者数が123万人と発表されましたが、これは日本の総人口の約1%にあたります。4人に一人が65歳以上の現代ですが、文部科学省の「大学基本調査」によると、団塊の世代が18歳を迎えた1966年には249万人いたそうです。当時の総人口が現在より3000万人少ない約9300万人です。この数字が戦後、最も高い値となって後は減少の一途をたどっていますが、2016年を境に2020年までは横ばい状態が続くそうです。

♦次に年代別の就学率はどうでしょうか。1955年には10,1%でしたが2014年では56.7%となっていますし、高等教育機関(専門学校も含む)だけでみると80%と非常に高い数字となっています。就学率が上がった要因としては、日本が高度成長期時代に突入し、企業が求める人材の確保や人々の教育志向が高まったことだと思われます。

♦また、就学率が上がったもう一つの理由としては、1990年代から大学の設置認可条件が緩和されたため、新設の大学や新たな教育課程を設けた既存の大学が増えたことが要因です。単純計算ですが60年間で約8倍、就学率アップと高い数値になっています。

♦次に、日本の大学数(私立・公立・国立)を紹介しましょう。1955年は228校、2012年からは780校前後となり現在に至っています。

♦少子高齢化が進む時代に、大学及び高等教育機関はすでに飽和状態になりつつあります。

なぜなら、人口の減少にも関わらず大学の数が変わる事はなく、当然のことながら経営は厳しくなるのです。このような厳しい時代に学生の確保が学校経営の大きな課題となるでしょう。

今の大学はどうなっている?

私立大学では、約4割が定員割れを起こしているというデータがあります。これは何も地方に限ったことではなく、都市圏にある知名度の高い大学でも起こっています。その結果、学部の閉鎖であるとか、2.3年先の廃業を視野に入れ学生の募集を行わないことが決定している大学もあります。こうなると影響は大学だけにととまらず、大学関連ビジネスなども大打撃を受けることになります。代表的なのが大学予備校のNO・1の代々木ゼミナールです。2016年秋、全体の7割にあたる20か所の校舎を閉鎖すると発表しました。この決定事項には生徒数の減少に対策そのものが無く、これ以上の経営存続は困難と判断したものです。

存続を賭けた対策とは

時代を先取りした運営をする

これからは大学のブランドのみで学生を募集するのは難しいかもしれません。学生を最優先した経営方針を打ち出さないと生き残りは難しいでしょう。まず今必要なのは、時代を先取りした学部の創設や確実に訪れる高齢化社会に対応できる看護や医療、教育や栄養学部などを新設することです。

大学の魅力をアピールする

もう一つは、快適なキャンパスライフを過ごせる環境設備の充実です。例えば、大阪にある関西大学の食堂はオシャレな雰囲気でランチを楽しむことができ、学生にとても好評を得ているそうです。また、他の大学にはないスケートリンクも併設し、オリンピック出場選手や多くのスポツ選手を輩出しています。そして、交通アクセスも良く駅から徒歩10分と通学にも便利です。要は学生を引き付ける魅力ある施設、設備が最も重要でしょう。

学費も見直す!?

今の日本の子供は6人に1人が貧困にあえいでいると言われています。バブルの崩壊以降社会の格差が広がったからでしょう。そうなると学費の高い私立大学は敬遠されがちになります。

ここで気になるのが、大学入学時いくら費用が必要なのかと言うことです。次の表にまとめてみました。

データーは2012年のものです。

入学科 授業料 合 計
国立大学 28万5200円 53万5800円 81万7800円
公立大学 39万7595円 53万7960円 93万5555円
私立大学 26万9481円 85万7763円 131万4251円

※私立大学(合計に、その他18700円含む)

♦引用元

マイナビ進学 https://shingaku.mynavi.jp/cnt/etc/column/step5/admission_fee/

国公立大学の授業料は2004年ごろから値上がりが止まっていますが、私立大学では今も上がり続けています。経営が難しいのは理解しますが、無駄を徹底して省くなどして1万円でも安くしたいところですね。

スーパーグローバル大学(SGU)創成支援における問題点

文部科学省は、国際競争力を高めるために財政支援を国立私立大学37校に制定しました。この財政支援事業は、 日本の大学教育における国際競争力の向上を目的に、優れた海外の大学との連携や大学改革の国際化を進めるものです。そしてハイレベルな教育研究を行う大学や国際化を牽引するグローバル大学に対し、制度改革と重点支援を一体で行うことを目的としています。

そんな中で、文部科学省が財政支援を行う大学が新たな問題を生み出しています。それは、選定に外れた大学との格差が広がっていることです。選定された各大学についてはタイプA(トップ型)とタイプB(グローバル牽引型)と分かれ、補助金が支給されます。タイプAには世界ランキング入りも可能な東大、早稲田など歴史ある13校が選ばれていますし、タイプBは「日本の国際社会のグローバル化を牽引する大学」を支援するとし、東京芸術大、東京外国語大、上智大、明治大など24校が選ばれました。この中にはユニークな取り組みをする地方の大学も3校含まれています。タイプAには国からの補助金が10年間で42億円、タイプBで17億円支給されるため、当然補助金が支給される大学では質の高い教育研究や、海外の大学にも引けを取らない実力を得ることも可能となるでしょう。そのため、選定に漏れた大学との差はますます広がり今以上の格差を招く恐れも出てきます。

まとめ

人口の減少で経営が困難なのは、企業に限ったことではなく、大学経営も厳しいのが現状です。理由として90年代に大学の設置認可が大幅に緩和されてことが背景にあります。勿論少子高齢化も要因の一つですが、出生率の低下を読めなかった国の政策の失敗ともいえます。今後、大学がとるべき道は、高い競争力を身に就け海外市場に打ち勝てる人材を多く輩出する教育支援ではないでしょうか。

 

 

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