最近の雇用事情を斬る

ここ最近のニュースを見ていると、「アベノミクスは失敗か」とか「若者の非正規雇用が増加」という見出しが多いように思えます。しかし、経済や雇用の事情を正確に把握するのは簡単なことではありません。裏にはメディアの操作があり、「間違った情報」が入ってくることが多いのです。では、‘本当の雇用事情’はどうなっているのでしょうか。

正社員は増えている

2008年のリーマンショック以降日本の正社員の数は増えずにいましたが、2015年はやや増加しました。増加率は1%にも及びませんが、それまでの状況を考えると喜ばしいことです。理由はやはり「景気の回復」で、アベノミクスにより輸出が伸びたのが功を奏したと言えるでしょう。

ただ、賃金については課題が残ります。2015年の平均年収は415万円ですが、1990年代は450万円を超えていたことを考えると寂しい数字ですね。日銀の黒田総裁は「物価の上昇率を2%にする」と言っていますが、当初の予定よりかなり先延ばしになっています。「黒田バズーカ」の成果が出ることを祈るばかりです。

非正規雇用も増えている

「えっ、両方増えているの?じゃあ、労働者の数ってそんなに増えているの?」という疑問を持たれるかもしれませんが、実際その通りなのです。2014年から2015年にかけて日本の労働者数は44万人も増えているのです。人口は減っているのに、なぜなのでしょうか。

1つ目は「高齢者の再雇用」です。今後の労働力確保のため、労働者本人が希望すれば再雇用する義務があるのですが、これにより定年を迎えても引き続き働く人が増えました。第一線は退いてもパートや嘱託で働く人がいるわけですから、これだけでも非正規雇用労働者は増えます。

2つ目は「主婦の就業」です。以前の日本では旦那さんが1人で稼ぐだけで十分でしたが、先ほど述べた正社員の給与にもある通り1人で家計を支えるのが難しくなりました。そこで主婦の方がスーパーのレジなどで働くわけです。(主にパートが多いです)いわゆる「共働き」ですね。子供の学費を稼ぐためにお母様方は頑張っているのです。当然非正規の人は増えます。

こうして見ると非正規雇用自体は決して悪いことだとは決めつけられません。むしろ労働力確保のためには必要な戦力なのです。若い世代で非正規の人が激増したら大問題ですが、実際は年配の人が多いのです。ですから、非正規雇用の問題を持ち出していたずらに「日本の未来は暗い」と言って煽るような記事は良くないと考えるのですが、いかがでしょうか。

失業者数はどうか?

日本の失業者を分析すると、派遣社員が増えていることが分かります。やはり「派遣切り」が続いているようですね。派遣社員に対する目はまだまだ厳しいと言えます。また、派遣社員として3年が経ってその後も継続して雇う場合は正社員にしなければならないのですが、中には派遣社員のまま働きたい人もいますので必然的に職を変わることになります。これも失業数を増やす要因になっています。

しかし、他の雇用形態も合わせて考えると失業者は減っています。ですからトータルで考えると雇用情勢は良くなっていると言えそうですが、格差に関しては開く一方です。また、公表されている失業者数には「『働きたくない』と言うニート」などは含まれていません。(就労の意欲がある人のみがカウントされるためです)失業者や失業率を見ただけでは日本の問題点は把握できないということを理解する必要があります。

まとめ

雇用の情勢はメディアによって捉え方が異なりますが、出来るだけ中立的な立場で考えることが大切です。今の日本は「景気は少し回復しているが、その恩恵を受けていない人が少なからずいる」と見るのが正しいのではないでしょうか。

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