最低賃金では生活が成り立たない
ここ数年、最低賃金引き上げの議論が過熱しています。背景にあるのは非正規雇用で働く人の増加です。実際に最低賃金でフルタイムとして働いたとしても年収は150万円程度で、生活するにはギリギリの金額なのです。今後この非正規で働く人々が60歳を超えると、その多くが生活保護に頼る恐れがあり、深刻な社会問題になる可能性があります。しかし現状ではなかなか政府も対策に乗り出し切れていない状況と言わざるを得ません。
欧米に比べ低すぎる日本の賃金
欧米に比べ日本の最低賃金は非常に安く設定されています。それは主婦のパート・学生の小遣い稼ぎのアルバイト程度を想定していたからではないでしょうか。欧米では時給にして千円程度にしている国がほとんどで、米国では景気の回復によって段階的にではあるものの、賃金の引き上げを広げる動きがあるようです。
こうした状況を考えると日本の賃金水準は、主要先進国に比べて非常に低く設定されているのが現状です。このような「生活するのがやっと」といった賃金では最低賃金の目的を果たせてはいないとの指摘が労働を専門とする専門家の間で議論されています。
広がる格差・非正規雇用
実際に小泉政権時代の規制緩和によって多くの業種に非正規雇用が拡大し、就職氷河期とも言われた時代に就職活動を行った世代が非正規雇用に流れ込み、その結果格差は広がったとも言われています。
一昔前ではパートやアルバイトは家計の足しに働くものとの認識でしたが、今ではパート・アルバイトといった非正規雇用での収入が主な収入源となっている状況も非常に多いのです。非正規労働者の割合も増加し、今では労働者の約四割の二千万人の人々が不安定な非正規雇用に従事している状況です。
働いても貧困状態から脱出できない厳しい状況の中、自身の収入で家族を養わなければならない人々もおり、実際に貧困の連鎖がおきているという社会問題がおきています。政治政党の公約に時給千円を掲げるところも多いようですが、実際に時給千円を実施するとなると様々な問題が起きる可能性が指摘されています。
中小企業との合意はどうなのか
政府から時給引き上げを要請しても、経営者側からは企業の支払い能力を超えているなど、なかなか一筋縄ではいかないのが現状のようです。一方的に要請すれば通るといったものではない以上、時給の引き上げは難しい問題となっています。また最低賃金が生活保護費を下回るといった問題もありました。このようなことが起きないよう、企業との話し合いがなされては来たものの、時給千円には程遠いのが現状です。日本経済団体連合会も賃金引き上げには非常に慎重という意見があり、問題の解決に時間がかかりそうです。
地域格差
また地域格差もあります。東京などの都市部と地方では自給にして二百円程度も違うといったこともあり、その格差を一律になくして時給千円という状況にしていくのは非常に困難が予想されます。賃金格差は広がり、地方の過疎化は加速していくといった悪循環が起きています。このような問題にどのように取り組んでいくのか今後を見守っていきたいところです。
まとめ
今の最低賃金では、生活していくことが難しい状況です。今後非正規雇用に従事してきた人々がが生活保護に流れ込む状況を生んでいくことになり、社会的な大きな問題となります。また賃金の引き上げも様々な問題があり、一筋縄ではいきません。最低賃金の問題は日本全体の課題であると認識し、議論を深める必要があります。
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