‘わがままトランプ’をブッタ切る

 

アメリカのトランプ大統領が就任して1か月が経ちますが、先日もフリン補佐官が辞任するなど政権運営が危ぶまれています。今月11日に開かれた日米首脳会談では安倍首相とトランプ大統領の‘蜜月ぶり’が目立ちましたが、それとは裏腹にトランプ大統領は日米の自動車貿易を「不公平だ」と断じています。

しかし、このトランプ大統領の主張は大いに誤っていると言えます。その理由を見ていきましょう。

なぜ‘不公平’なのか

トランプ大統領が「不公平だ」と言う背景には、日本がアメリカに大量の新車を販売しているにもかかわらず、アメリカからの販売台数がかなり少ないという現実があります。しかし、昨年の日本はアメリカに175万台の自動車を輸出したのに対し現地生産は384万台(2015年)と2倍以上なのです。

しかも、アメリカが日本に売る時は関税がないのに日本が輸出する時は2.5%の関税がかかるのです。こちらの方が「不公平だ」と言いたいくらいですね。

日本に合わせた車を売っていない

それでも不公平だと感じるのは、アメリカのビッグ3(ゼネラル・モーターズ・フォード・クライスラー)が日本に1万5000台ほどしか売れていないからなのでしょう。しかし、その原因はアメリカが日本の事情を無視した取り組みにあるのです。

日本はアメリカと違って狭い路地が多いため、小型の自動車が好まれます。また、日本人は環境に対する意識が高いため、燃費も車選びをする際の大事な要素となるのです。ですが、アメリカはこういった事情を鑑みず、大型車やガソリンを大量に消費する自動車しか売ろうとしません。

こういった‘戦略ミス’が売れない原因になっていると考えられます。確かに環境に対する意識は日米で大きく異なりますし、アメリカ人からすれば「日本人は環境に対する意識が高すぎる」と感じるのでしょう。しかし、儲けたいのなら相手の事情に合わせるのが筋です。「自分の国がナンバーワンだ」という‘おごり’が影響しているのかもしれませんね。

そもそもアメリカは中国を見ている

トランプ大統領の主張が的外れなもう一つの理由は、アメリカがそもそも日本よりも中国を重視しているところにあります。それもそのはず、人口が1億人そこそこの日本と14億人近い中国のどちらを重要視するかと聞かれたら・・・?絶対中国ですね。

アメリカの自動車メーカーは中国の各都市のモーターショーには顔を出していますが、東京のモーターショーには参加すらしていません。それで不公平だと言うのはどう考えてもおかしいですね。もしトランプ大統領がこういった事情を知らないで発言しているのなら、大統領という以前に政治家としての手腕が疑われます。強気な発言は悪くありませんが、バックグラウンドを無視した発言を繰り返すと各国から見放されてしまいます。十分気を付けてもらいたいですね。

日本も配慮し過ぎでは?

今月の3日にトヨタ自動車の豊田章男社長と安倍首相が会談を行いました。おそらく‘トランプ対策’について話し合われたと思われますが、日本はこれ以上アメリカに配慮する必要はあるのでしょうか?

一昨年に384万台の自動車を現地生産した時はアメリカに150万人の雇用を生み出しました。これだけでもトランプ大統領の希望に十分沿っているはずです。それにもかかわらずトヨタは向こう5年で1兆5000億円の投資をすることになりましたし、ホンダもGM(ゼネラル・モーターズ)との合弁生産を打ち出しています。

いずれも‘トランプ発言’に配慮したものと考えられますが、かつての貿易摩擦を考えると日本は既に自動車産業においてアメリカに有利になるようにしています。その上トランプ大統領の‘トンチンカン発言’に配慮するとなると、今度は日本の輸出に悪影響を及ぼしかねません。安倍首相が掲げた「2020年までに基礎的財政収支を黒字化する」という目標も達成できない見通しですから、日本は自国の産業を強化することを第一に考えるべきなのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか?いかにトランプ発言が間違ったものかがお分かりいただけたのではないかと思います。今年は特に世界情勢が荒れることが予想されます(先日も金正男氏が暗殺されました)。このような荒れ狂った世界で生き残るには過激な発言や行動に動揺することなく、自国の信念を貫き通すことが肝要です。日本の自動車産業も、トランプ氏が何を言おうと今まで通りの方針を貫くべきだと私は考えます。

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