日本の雇用問題を考える
最近の日本は非正規雇用者の割合が増加し、問題視されています。しかし、「何がどう問題なのか」と聞かれたら答えるのは簡単ではありませんね。バブルが崩壊してから増えたのですから、何らかの形で問題があるのは間違いありません。そこで今回は労働者の視点に立って問題点を整理し、解決の方法を考えてみます。
非正規雇用者が増えた背景
バブル崩壊後の不況によって、日本の企業はコストをダウンせざるを得ない状況になりました。コストダウンと言えば「人件費の抑制」ですが、日本は長年年功序列・終身雇用を維持してきたので、既に働いている人の雇用形態を変えるわけにはいきません。
そこで企業は「これから働く人」の人件費を抑えるべく、正社員の採用枠を減らしたのです。これが、非正規雇用者が増えた第一の理由です。
次に考えられるのは、「雇用の規制緩和」です。とりわけ派遣業にその傾向が目立ち、2004年に製造業に派遣労働者を充てることを認めてから派遣社員が一気に増えました。現在は同じ職場で3年以上働くことのないようになっていますが、派遣社員にとって有効な改善策にはなっていないようです。規制緩和の是非はいつも議論になりますが、行き過ぎた規制緩和によって国民にしわ寄せが来るのを忘れてはなりませんね。
労働者のデメリット
では非正規雇用者は自分の境遇をどう考えているのでしょうか。少しデータが古いのですが、厚生労働省が2010年に調査をしたところ「正社員になりたい」と考えている非正規雇用者は25.7%います。ですが、派遣社員となると57.8%に跳ね上がります。
そして正社員になりたいと考える大きな理由は何と言っても収入のアップ、そして安定した仕事に就くというものです。日本が不景気になってから老後を含めた将来の不安を感じる人は増えています。ですから少しでもいいポジションについてお金を貯えたいと考えるわけです(当然ですね)。
さらに非正規雇用者は厚生年金などに加入しづらいという問題も抱えています。厚生年金に加入するには、基本的に1週間で30時間以上勤務する必要があります。しかし、パート社員などは勤務時間がこれより少ない場合が多いです。
労働者が「30時間未満でいい」と言うのなら大した問題になりませんが、厚生年金は企業が保険料を半分負担しなくてはなりません。そのために企業側があらかじめ週の勤務時間を30時間未満に設定することがあるのです。コストカットをしたいのは理解できますが、厚生年金に入りたいと考える労働者は多いので、それに反して企業の都合で勤務時間を少なくするのは問題です。基本的な賃金だけでなく、年金や保険といった問題も非正規雇用者は抱えているのです。
待遇の改善を考える
これらの問題を解決するには、企業の負担を減らしつつ非正規雇用者を正社員に転換したり、スキルアップの機会を与える必要があります。そこでカギになるのが「キャリアアップ助成金制度」です。これは厚生労働省が行っているのですが、有期契約を結んでいる労働者を正社員にするだけで50万円(1人当たり)の助成金が支給されるのです。もし派遣社員を正社員に登用したらさらに30万円アップして80万円が支給されます!これは大きいですね。これは助成金制度の中の「正社員化コース」と呼ばれるのですが、同コースにはこのほかにも様々な支給基準が設けられています。
また「人材育成コース」では有期雇用の方に一定時間以上のOJTやOFF-JTを実施することで54万円(1人当たり)が支給されます。従業員のスキルアップを図ることで社員本人が喜ぶのはもちろん、企業の生産性が大きく改善されます。
2016年は420億円の助成金が支給されるなど、認知されてきています。この制度の活用で多くの非正規雇用者が正社員になったり、スキルアップして賃金も上がったという報告がなされています。まさに非正規問題を解決する‘救世主’ですね。
まとめ
これからは非正規雇用者が活躍する時代に入ります。従来の日本は正社員を厚遇し続けてきましたが、この制度の活用や「働き方改革」によって非正規雇用者も正社員に近い仕事を任され、待遇も上がると考えられます。停滞を続けてきた日本経済も活性化するのではないでしょうか。
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