『過労死白書』に見る現代の働き方

平成28年6月、厚生労働省より【平成27度「過労死等の労災補償状況」】が公表されました。2014年に「過労死等防止対策推進法」が成立してから、過労死に関する実態調査が公表されるのは今回が初めてです。この実態調査で明らかになったことは、2割以上の企業で1カ月80時間以上の残業をしている人がいるという事です。

これは「過労死ライン」です。中には100時間以上の人もいますので、企業の「過労死防止」に対する取り組みが不完全であると言え、今だ長時間労働が改善されない、日本企業の実態が浮き彫りになってきました。

「日本人の平均労働時間は減少している」のカラクリ

OECDの資料によると、日本人の年平均労働時間は、1995年は1900時間を超え米国、ドイツ、フランス、英国などを抑えてワースト1でしたが、2014年は1800時間を切り、米国に次いでのワースト2です。これを見ると、日本人の労働時間は改善されているように思えますが、これにはカラクリがあります。

それは、パート労働者の比率が上がったことにより平均が減少しているだけの事で、一般労働者の労働時間は相変わらず2000時間前後です。先にも述べたとおり、80時間残業の割合も全体の2割以上ですから、「過労死」が増えるのは当然の事にも思えます。

2015年度の過労死「認定」はわずか189人

過労死認定は大きく二つに分けられます。一つは「脳・心臓疾患」による死亡、もう一つは「精神疾患」による自殺者(未遂も含む)です。2015年度は脳・心臓疾患による死亡者96人、精神疾患による自殺者(未遂含)93人が認定を受けています。脳・心臓疾患による死亡者数は、一番多かった2002年の160人より少しずつ減っているようですが、精神疾患による自殺者(未遂含)数は、1999年の11人に比べ増えており、ここ数年は90人以上と多くなっています。

調査によると正社員の約37%はストレスを感じており、残業が週20時間を変える人は54%の人が感じているそうです。そしてその原因が、仕事の量や質であると65%の人が答えています

しかし、この数字は一端にすぎません。同じ2015年の警察庁のデータとして、仕事上の原因で自殺している人が2159人いると報告されているからです。実際の数字と認定者数に乖離があるのは、今後の大きな課題でしょう。

まとめ

日本人の労働時間は改善されたかのように報告されていますが、決して改善はされていません。1カ月80時間残業を超える企業が2割を超える以上、「過労死」という言葉がなくなることはないはずです。企業はこの数字を真摯に受け止め、改善を早急にしなければなりません。

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